健保の財政問題

 ちょっと古い資料ですが、ご紹介します。

 政管健保の99年度の保険料収入は6兆1,700億円で前年度の6兆1,800億円を下回りました。

 加入者数はほぼ横ばいですが、標準報酬が1932年以来67年ぶりに前年を下回るため減収につながりました。

 これに対して98年度の支出は7兆1,300億円で9,500億円の赤字。

 99年度は1兆2,400億円の赤字が生まれました。赤字の補填は社会保険庁が資金が潤沢だった時代に積み立てた事業安定資金を取り崩しておこなわれていますが、この資金は今や底を尽いたとも言われています。

 企業が主催する健康保険組合でも、企業の財政悪化のために健康保険組合を解散する動きが広まっています。

 従来、厚生労働省は企業が倒産、あるいは合併した際にしか健康保険組合の解散を認めていませんでしたが、数年前になって自主解散を認めるようになりました。

 これまでも、医療費の増加で97年度には全国の1813の健康保険組合のうち55%が赤字決算となりました。この年、健康保険組合の保険料は5兆7,568億円でそのうちの半分強を企業が支払っています。

 同年3月期の上場企業の経常利益は10兆8,856億円で、保険料はその3割近くに達しています。98年度も全健康保険組合の55.2%が赤字になっており、赤字総額は1,590億円に達しました。

 健康保険の財政悪化が顕著になったのは、バブル景気の崩壊によるとされます。

 企業が新規採用を手控え、新たな保険料収入がふえず、給与がのびないため保険料は頭打ちになったこと。

 また老人保険法が導入され、それまでほとんど国民健康保険から支払われていた老人保険が、各健康保険組合から拠出金として、一定の割合の保険料が支払われることになったこと。

 従来から言われているように薬付け医療により、医薬品への支出が年々増加の一途を辿っていることなどが原因とされています。

 健康保険組合を解散すると、組合員は政管健保に移管されます。

 政管健保は月収の8.5%(賞与は1%)を労使折半で支払うことになっていました。

 この労使分担は健康保険組合でも同じですが、大企業のなかでは長い労使交渉の結果、半分以上を拠出しているところも少なくありません。

 その場合、政管健保に移管され、折半で支払うことになると従業員の負担が増すことになります。

 また、財政が悪化している健康保険組合では制度上の上限である9.5%(賞与は1%)まで保険料を上げているところもあり、健康保険組合の解散により、政管健保に移管されれば、8.5%なので企業の負担は軽減されることになります。

ある健康保険組合の予算

 同業の会社が集まって作っているある総合健康保険組合の99年度予算を見てみましょう。

 見込まれている収入・支出は約347億8,000万円でそのうち収入の約91%は被保険者と事業主からの健康保険料です。

 支出で一番大きいのが、保険給付費で約160億8,000万円で、支出の46.23%を占めています。

 これは被保険者や被扶養者の医療費です。この金額は医療の高度化などにより年々上昇しています。

 2番目に多い支出が老人保険への拠出金です。この額が86億8,000万円となり支出総額の27.4%にあたります。

 この拠出金が健康保険組合の財政を圧迫している大きな要因となっていることがわかります。

 高齢化が進めば、拠出金はさらに増えることになります。

 これがもし政管健保であれば、保険給付費の13%にあたる20億9,040万円、老人保険の拠出金の16.4%にあたる14億2,352万円をあわせ35億2,292万円が国庫より支払われることになります。

 拠出金が多く、補助がほとんどない健康保険組合の苦しい運営の一端が見えますね。

社会保障か財政問題か

 第2次大戦後の自由社会の経済的・社会的安定には社会保障制度のなかの失業保険、年金、健康保険がはたした役割は大きいものがありました。

 日本の社会保障制度は戦後は「ゆりかごから墓場まで」といわれるイギリスの社会保障制度がモデルになっています。

 イギリスの社会保障制度が、国民の負担増として問題になりはじめ、日本においても高齢化社会となり、国家財政の状況が逼迫し、社会保障の水準に影響を与える懸念が現実化しています。

 自助努力の流れは必至とも言えるでしょう・・・・

2003年04月10日

カテゴリー:社会保険の基礎知識


このページの先頭へ